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書誌情報

Vol.72 No.1 January 2024

原著・臨床

抗HIV療法中の男性HIV感染者における内臓脂肪型肥満

古西 満1, 2), 宇野 健司2, 3), 治田 匡平4), 福盛 達也2), 笠原 敬2)

1)奈良県立医科大学健康管理センター
2)同 感染症センター
3)南奈良総合医療センター感染症内科
4)奈良県立医科大学附属病院薬剤部

要旨

 HIV感染者の体重増加や肥満が注目されている。単なる体重だけの把握ではなく,内臓脂肪を評価することは重要である。そこでわれわれは内臓脂肪面積(visceral fat area:VFA)をDual-bioelectrical impedance analysis(Dual-BIA)法による内臓脂肪測定装置(DUALSCAN®)を用いて測定し,HIV感染者の内臓脂肪型肥満の臨床的特徴を検討する。
 抗HIV療法によってウイルス量が20コピー/mL未満を維持している男性HIV感染者61名(年齢中央値46歳)を対象として,臍部高でのVFAを測定した。身体測定値,体脂肪率(BIA法),高血圧・脂質異常症・糖尿病・脂肪肝・メタボリックシンドロームの有無,脈波伝播速度(pulse wave velocity:PWV)の年齢平均値との差(⊿PWV),血漿酸化ストレス度・抗酸化力についてVFAが100 cm2以上(内臓脂肪型肥満)と未満(正常)の症例群に分けて比較した。
 VFAの中央値は78.0 cm2で,20名(32.8%)が内臓脂肪型肥満に該当した。両症例群で年齢・HIV感染症の病期・CD4数には有意差を認めなかった。内臓脂肪型肥満では外食の機会が多く,運動習慣が少ない傾向を認めた。Body mass index・腹囲・体脂肪率は内臓脂肪型肥満で有意に高値であり,VFAと腹囲は有意な正の相関を認めた。内臓脂肪型肥満では高血圧・脂質異常症・糖尿病・脂肪肝・メタボリックシンドロームの合併が有意に多く,⊿PWV,酸化ストレス度が有意に高値であった。Tenofovir alafenamide未使用症例では高血圧,脂質異常症,脂肪肝,プロテアーゼ阻害薬使用症例では高血圧,メタボリックシンドロームの合併が有意に多かった。
 内臓脂肪型肥満を認めるHIV感染者では代謝性疾患の合併が多く,動脈硬化も進行しているので,HIV感染者もVFAや腹囲に注意して診療をする必要がある。内臓脂肪型肥満を認めるHIV感染者の病態に一部の抗HIV薬,生活習慣,酸化ストレスが関与している可能性が示唆された。

Key word

human immunodeficiency virus, visceral fat obesity, metabolic syndrome, antiretroviral therapy

別刷請求先

奈良県橿原市四条町840

受付日

2023年1月31日

受理日

2023年9月4日

日化療会誌 72 (1): 1-8, 2024