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書誌情報

Vol.72 No.1 January 2024

原著・臨床

院内High Performance Liquid Chromatographyによるvoriconazoleの血漿中濃度測定―薬剤師による外来患者へのTDMと診療支援―

山本 圭城1), 安井 友佳子2), 山本 弘平1), 日比野 泰志1), 安井 裕之3), 石坂 敏彦2), 小川 吉彦4)

1)堺市立総合医療センター薬剤科
2)同 薬剤・技術局
3)京都薬科大学分析薬科学系代謝分析学分野
4)堺市立総合医療センター感染症内科

要旨

 Voriconazole(VRCZ)は,血漿中濃度測定によるTherapeutic Drug Monitoringを行うべき薬剤である。しかし,VRCZの特定薬剤治療管理料1は入院患者にしか算定できない。そのため,外来患者のVRCZ血漿中濃度測定は多くの場合実施されない。われわれは,院内の薬剤科にHigh Performance Liquid Chromatography(HPLC)-UV検出装置を設置し,外来患者のVRCZ血漿中濃度測定を開始した。また,迅速な血漿中濃度結果返却と,血漿中濃度に基づいた診療支援を行った。今回,その現状について報告する。
 2020年10月~2023年5月までの間に,VRCZの血漿中濃度測定と診療支援を行った外来患者を対象とし調査を行った。調査項目は,VRCZ血漿中濃度,使用目的,肝障害の有無,視覚障害の有無,提案内容,提案受入の有無などとした。
 期間中にVRCZ血漿中濃度を測定した外来患者は6名であった。測定した検体数は20件で,そのうち1件は採血時間の不適により除外された。残り19件のうち,1件は定量下限以下であった。VRCZ血漿中濃度の中央値は1.49(範囲は0.54~5.00)μg/mLであった。19件中で投与量の増量を提案したのは6件(31.6%),減量を提案したのは1件(5.3%)であった。外来当日に提案を行ったのは16件(84.2%)で,全体の提案受入率は94.1%であった。
 VRCZの至適濃度(1.00~4.00 μg/mL)の範囲外だった例は7件(36.8%)であり,そのすべてにおいて投与量変更の提案があった。そのため,外来患者においてもVRCZ血漿中濃度の測定とそれに基づく診療支援は重要と考える。また,多くの例で外来当日に提案を実施していた。院内のHPLC-UV検出装置を使用することにより,市中病院においても,血漿中濃度の測定結果を迅速に診療へ反映することができた。今後,より多くの外来患者で,より高頻度に血漿中濃度の測定を行える院内体制を構築していく予定である。

Key word

voriconazole, TDM, high performance liquid chromatography, outpatient

別刷請求先

大阪府堺市西区家原寺町1-1-1

受付日

2023年8月4日

受理日

2023年10月2日

日化療会誌 72 (1): 9-16, 2024