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投稿規定

平成27年6月4日

日本化学療法学会雑誌編集委員会からのお知らせ
日本化学療法学会雑誌におけるPK/PD関係の投稿論文の審査基準について

 日本化学療法学会雑誌では抗菌薬、抗菌化学療法に関する皆様の研究論文を広く募集しており、会員の皆様には深く御礼申し上げます。本誌に最近投稿していただいておりますPK/PDに関する論文のうちのいくつかが、本誌の審査基準を満たさず不採用になっております。
 PK/PDは抗菌化学療法の発展には不可欠で重要な研究分野であることから、この度本誌のPK/PD関係論文の審査基準を会員の皆様に明示する必要があると考えました。PK/PDに関する研究成果を本誌に投稿される場合の参考にしていただければと存じます。

【審査基準】

I.人・動物において、研究者および共同研究者を含む施設で得られた薬物濃度に関する研究

  1. 薬物動態パラメータの算出:特定の被験者群において得られた新規性が認められる薬物動態パラメータの報告。母集団薬物動態解析の場合、同一被験者群の再解析を含む。
  2. PK/PDパラメータに関する研究:特定の被験者群・動物において得られた有効性あるいは安全性に関する新規性が認められるPK/PDパラメータの報告。In vitro試験、動物における感染モデルなども審査対象に含む。
    評価に用いるパラメータは、タンパク結合率を考慮し、遊離型濃度として解析することが望ましい。総濃度による評価の場合にはその理由を記載すべきである。
    ICT/ASTや薬剤師の介入によるPK/PDパラメータ達成およびアウトカムの改善等は次項I-3参照。
  3. 用法・用量に関する研究:特定の被験者群において細菌学的または/および臨床的有効性および安全性の評価、または確立したPK/PDパラメータ(治療薬物濃度)の達成等に基づく(モンテカルロシミュレーションを含む)、新規性が認められる用法・用量の設定が検討されている場合。
    有効性・安全性の評価にあたっては適切なスタディデザイン、客観的・科学的根拠に基づいた基準が必要である。
    PK/PDパラメータを達成するための用法・用量の検討において、目標とするPK/PDパラメータが確立されていない特定の母集団(透析時のアミノ配糖体のPK/PDパラメータ等)の場合には、有効性および安全性の評価が必要。
    薬物動態学的視点からの用法・用量の検討にあたっては、薬物の動態特性、特にクリアランスと維持用量、分布容積と負荷用量に影響を及ぼす共変量(腎機能、体重等)を適切に評価することが必要であるが、推定クレアチニンクリアランスにおける体重や年齢等の因子重複や交絡因子に気を付けなければならない。
  4. 投与設計に用いるTDM解析ソフトウエアの比較・検証:投与設計に用いるソフトウエアに組み込まれている母集団パラメータおよび推定アルゴリズムの特性および測定された薬物濃度に基づいた検討から、新規性が認められる知見が得られている場合。ソフトウエアにデータを入力した検証のみでは新規性のある適切な方法論とは判断されない。
    基本的に母集団パラメータに基づく薬物投与設計に対する外部データを用いた評価を想定しており、検証にあたっては、共変量の適応となる範囲全体を満たすような、バラツキのある患者データが必要とされるが、患者数が少なく共変量の範囲が限られている場合、研究施設で得られたデータに基づくモデル&シミュレーションによる検討も対象となる。

※1~4について、同一背景の対象群・方法論であっても既存の報告と異なる新たな知見が得られている場合、また、被験者数が多くなり統計学的に検出力などが改善されている場合を含むが、同一研究者における同様の報告の場合、二重投稿とならないように注意すること。

II.既報の薬物濃度を活用した研究あるいは仮想薬物濃度等を用いた研究
〔モデル&シミュレーション(M&S)、研究者および共同研究者を含む施設で薬物濃度が得られていない場合〕

  1. レビューによる再解析:複数の既報論文から得られる網羅的な解析や新たなモデル、手法によってPK/PD、用法・用量設定などに関する新規性が認められる知見が得られた場合。メタ解析、薬物横断的な解析なども含む。
  2. モンテカルロシミュレーションおよび臨床研究に関するM&S:モンテカルロシミュレーションによる解析を含むが、既報の目標PK/PDを達成する単一の薬品の用法・用量設定の検討に関して、単に薬品が変更された場合の報告を除く。その後に引き続き実施される臨床研究に関するM&Sの有効性等に関する報告は審査基準を満たす可能性がある。
  3. Mechanism Based PK/PD解析:細菌の対する抗菌薬の有効性または耐性化等に関するMechanism Based PK/PD解析について、新たなモデルの有用性や新たな知見が得られた場合。

【散見される指摘対象事例】

  1. 投与設計に用いるTDM解析ソフトウエアを検討している際に、組み込まれている母集団パラメータや解析アルゴリズムが正しく理解されていない。
  2. 既報の薬物動態パラメータを用いて、目標とされている1薬品のPK/PDパラメータを達成する用法・用量を検討しているのみで新規性・汎用性がない。
  3. ピーク値やトラフ値など意味のあるサンプルの薬物動態学的性質が正しく理解されていない。
  4. 薬物動態モデルやサンプル数、サンプリングのタイミングが具体的に記載されていない。サンプルの数や母集団背景について考察されていない。
  5. 算出された薬物動態パラメータのみが記載され、得られた(血中)濃度のプロットが無く、生データを読み取ることができない。
  6. 薬物動態パラメータの母集団平均のみが記載されており、分散が記載されていない。
  7. 相関分析においてパラメトリック手法の使用方法と解釈が誤っている。
  8. 報告の主要結果を構成するデータの一部が既報の論文と重複していたが、既報であることを明示していない。

以上